【前回の記事を読む】彼が期待に胸を膨らませているかのように、風が薄い胸にシャツを張り付けたり膨らませたりしてはしゃいでいた
壺を抱いたネコニャ
うーん。人目がないと、私って大胆なことをしちゃうのね。
と思ったのは、私だけではなかったらしい。彼の頬に手を当てたところで、それに気がつき固まってしまった私を、彼もちょっと驚いた目で見下ろしたからだ。
どうしよう……。
手も外せず、視線も外せなくなって、私は硬直した。するとトーヤが、ほんの少し首を左に傾けて、私の手の平に自分の頭の重みを預けると、薄い唇を真横に引いてにっと笑った。
「お父さんやお母さん、いないの?」
さりげなく横を向いて家を見る振りをし、彼は私の緊張を解くようにすっと離れた。
「ええ」
ほっとしたのと同時に、私は両親の話題には触れたくなかったから、軽く受け流して中断させた。
「ふーん」
トーヤは納得しかねるような声を出したが、詮索するのも失礼だと思ったらしく、すぐに気分を変え逆に安心したように見えた。にこっと笑うと、私について家に上がり込み、ピアノ室へ入ってきた。
防音処置を施しているので素っ気ない感じがする部屋だが、充分掃除をし、窓を開け放しておいたため、九月中旬のさわやかな空気が部屋を出入りしていた。
私はトーヤのためにロー・ソファーを準備しておいた。それは二階の自室に置いてあったものだが、絶対に彼が気に入ると思ったから、ピアノ室へ引きずり下ろしたのだった。
私の思惑どおり、ソファーに座った彼はすぐに気に入ったようだった。大きなため息をつくと、ころんと横になって目を閉じた。