【前回の記事を読む】スーパーで買い物中、警報音が鳴り、「火災が起きました」…しかし、周りの買い物客はなぜか全く動じず…

訳アリな私でも、愛してくれますか

笹川は綺麗で手広い1DKの部屋に住んでいた。2人でキッチンに立ち、一緒に食事を作ると、思っていたよりも笹川が料理上手なことを知った。そして作った食事を終えたあと。

「笹川さん」

「なんでしょう?」

ソファに並んで座った時、くるみは心を決めた。笹川の方に身体を向け、その目を見る。

「この間、言ってくれたこと、私なりに考えてみました。その、会社から離れて、一緒に暮らさないかっていうお話」

「……はい」

笹川もくるみの真剣さを受けて、居住まいを正し、こちらに身体を向けてくれる。

「まだ、笹川さんのお気持ちは、変わっていませんか?」

「もちろん、変わっていません」

「だったら……ぜひ、よろしくお願いします!」

くるみは頭を下げた。笹川もそれに驚いたのか、すぐに頭上から「頭を上げてください」という声が聞こえてきた。

「くるみさん、それは本当ですか?」

「はい。もちろん、家賃は半分出しますし、これまでの貯金で生活費はちゃんと出します。これまで、自分の人生にきちんと向き合ってこなかったから……人生の節目として、ちゃんと考えたいって思って……」

「それがいいと思います」

「あと……笹川さんと、少しでも一緒にいられる時間が長くなると、いいなって……」

「……」

くるみの素直な言葉に、笹川の耳が少し赤くなった。そして思わずといった様子でくるみを抱きしめる。

「そんな言葉、ずるいです。もっと好きになってしまいます」

「笹川さんだって、私がもっと好きになるようなこと、たくさん言ってくれましたよ?」

「……それは、あくまで僕の本音ですから」

「私も同じです」

互いに笑って、少し身体を離す。近い距離で視線が絡むと、くるみの胸をときめきが支配する。

「くるみさん」

「はい」

「口づけても、いいですか」

「……もちろんです」

ゆっくりと唇が重なり、触れるだけの可愛らしいキスをした。それだけでもどこかこそばゆくて、恥ずかしい。目を開けてみると、笹川のはにかんだ笑顔が見えた。

「……幸せです」

「私もです」

もう一度だけ触れるだけのキスをして、2人は手をつなぎ、帰るまでの時間を他愛のない会話で過ごした。