【前回の記事を読む】少し体を離すと、近い距離で視線が絡んだ。すると彼は触れるだけのやさしい口づけをした。ゆっくりと唇が重なり、2人は手を繋いで……

訳アリな私でも、愛してくれますか

「なんか、変な感じ」

「人にペンライト振らせといて変な感じって失礼だな」

「いや、ごめん。そういう意味じゃなくて……」

「で、これであんたの推しは満足するの?」

「する……と思う!」

「なら振るわ」

「うん、めっちゃ振ってあげて! あ、でも曲によって振り方があるんだよね……まぁでも、最初はなんか周りに合わせる感じで」

「あんたのこと見ながら振る」

「うん。あ、私結構コールとかもするんだけど……」

「コール?」

「そう。曲に合わせて掛け声とか……お決まりのがあるの。それとか叫んでても、あの……知らないふりしてください。引かないでね。いや、引いてもいいんだけど顔には出さないで」

理子がそういうと秋斗が少しだけ笑う。

「別に、そんなことで引かないだろ。こういうのは全力で楽しんだほうが思い出に残るだろうし」

そう話しているうちに会場内の照明が落ち、ライブが始まった。

ライブ中、ふと盗み見た秋斗は相変わらずほとんど表情筋は動いていないような気がしたが、どことなく楽しんでくれているようで言われたとおりペンライトを振ってくれている。

(楽しんでくれてるっぽいな……よかった)

一安心していると、ふと目があう。そしてそれに気づいた秋斗は、ふんわりと優しいまなざしで理子を見た。

(……そんな顔、するんだ)

思わず理子の胸が騒ぐ。秋斗の視線で、その気持ちが伝わってくる。頬がじんわり熱くなって、どうしようもなく口角が上がってしまう。

(私、この人のこと好きかも……)

ライブ中、こんなに他のことを考えたことはない。席は隣同士なのに、触れられないその距離が遠いなとも一瞬思ってしまう。