理子はいつものように動きやすい靴とパンツ、そしてメンバーが映っているグッズのTシャツ、メンバーカラーのスポーツタオルを首にかけた姿で待ち合わせ場所に立っていた。

(普通にライブ参戦の格好できちゃったけど、引かれるかな……!?)

この前に用事があるというので家からではなく現地集合ということになったのだが、いざライブのテンションでここまできて、急に不安になる。

(やばい、この女っ気のない格好はさすがに引かれる気がしてきた……)

メンバーカラーのペンライトや、グッズ販売で購入した生写真など、すでにオタク感満載にも関わらず、急な不安にかられ始めた。

(どうしよう、ロッカーか何か……いや、着替えもないし、でも近くに服を買えるところなんて……)

「何きょろきょろしてんだよ」

「あっ……豊橋……」

「お疲れ。遅くなってごめん」

いつもより素直な言葉と、久しぶりに見たその顔に、どきりとする。ライブに誘った日から今日まで、不思議とマンションでも会社でも会うことがなかった。一方的に理子が目で追っていたことはあったが、言葉をかわしたのが久しぶりに思える。

「じゃあ、……行こっか。もう開場してるから」

「ああ」

ライブのチケットを手渡し、会場に入る。今回のライブはコンサートホールなので席がある。開演までの間、2人並んで席についた。

「今日……ありがとう。来てくれると思ってなかった」

「だろうな」

「だって、アイドルとか興味なさそうだし……」

「ないよ」

「えっ、だったらなんで……」

「別に。休日に会えるなら悪くないなって思っただけ」

(そういうことって普通に正面から言うものなの!? 私が変に意識してるだけで、もしかしたら世の中の人は違うのかも……?)

妙に考え込んでしまい、秋斗が不思議そうな顔で覗き込んでくる。

「何考えてんの?」

「いや、ううん、なんでもない。それより……なんか、手持ち無沙汰だよね!? 私のペンライト、1つ貸してあげる」

いつも予備の分まで持ってきている理子が、メンバーカラーの紫色に発色するペンライトを秋斗に手渡した。

「うわ、眩し。意外と明るいんだな」

「そうだよ。それをライブ中、私の推しに振ってあげて」

理子の言葉に、秋斗が小さくペンライトを振ってみせる。その無表情にも近いクールな表情と明るく輝く紫のペンライトのテンションがあまりに釣り合わなくて、理子は笑ってしまった。

次回更新は4月30日(木)、11時の予定です。

 

👉『訳アリな私でも、愛してくれますか』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】「凄いイケメンくんだ…ちょっと想像以上だわ」肩から少しずつ脱がされ、身体を重ねるような密着マッサージがはじまり…

【注目記事】不倫夫と離婚して1年。男性なんてと思っていたのに、初めて触れられた。「手を出して。柔らかいな、気持ちいい。」と言われ…