「都内連続放火事件で捜査に進展があった。これについて鍬下警部補に説明してもらう。鍬下」
捜査会議で土屋の指名により鍬下が起立し説明を始めた。
「はい。あきる野市の岡本誠さん宅に火災発生当日の朝、宅配業者を装った不審な2人組が大きな段ボール箱を宅内に搬入し、すぐに同じ段ボール箱を白いトラックに乗せ持ち帰ったという近隣住民の証言を得ました。
これに基づいて3件の火災現場付近の防犯カメラ及びドライブレコーダーの映像を再確認したところ、新宿の火災では見当たりませんでしたが、国分寺の火災現場付近で火災当日の朝、白いトラックとそれに乗っている灰色の帽子と制服を着た2人組が確認できました。
また、国分寺の近隣住民に再度聞き込みをしたところ、やはり藤田洋子さん宅からも同じ宅配業者が当日の朝、大型の段ボールを運び出すのを目撃したという証言が得られました。
2人組は帽子を目深に被っているため、顔が判別できませんが、トラックの車両ナンバーを確認できたため、リレー捜査を行った結果、このトラックは2件の火災発生日において、中央防波堤埋立地に向かったことが判明しました。
ここには現在操業停止中のクレマティオ重工業のコンビナートがあります。そこにある工業炉は2000度まで加熱することができます。付近の運送会社に確認したところ、最近、操業停止中にもかかわらず、工場から煙が上がっていたのを目撃した社員が数名いました。
そこで、クレマティオの社長に事情聴取したところ、正体不明の人物から2000万円で短期間だけ工場を貸し切りたいと申し出があり、倒産寸前で資金繰りに困っていた彼は取引に応諾してしまったと白状しました。
ここからはあくまで推測になりますが、新宿の火災と、これら2件は犯行手段が異なるものと思われます。
後の2件はおそらく何者かが組織的に行った犯行であり、宅配業者を装った2人組が被害者宅に侵入し、被害者を生きたまま拘束、もしくはその場で殺害して段ボールの中に押し込め、トラックに乗せて運び去り、工業炉で燃焼させ、再び被害者宅に炭化した遺体を持ち帰り、ガソリンをかけて放火したものと推測されます」
「質問」
捜査員の一人が手を挙げた。
「何でわざわざそんな面倒なことをしないといけないんだ? 犯人の動機は?」
「それは分かりません」
「防犯カメラに映っていた黒いパーカーの男との関係は? 奴は新宿の火災を含め、3件とも火災発生時刻に現場に現れている」
「それも分かりませんが、犯行が一人では不可能なことを考えると、捜査の攪乱目的に用意されたデコイではないかと」
「じゃあ、その囮に俺達は振り回されてたってことか」
次回更新は3月17日(火)、21時の予定です。
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