【前回の記事を読む】ぼろぼろに崩れるまで体を焼かれた、独居女性…近所の人は事件当日、“ある異変”を感じていた…

サイコ4――人体発火

「その後、洋子さんとお話をされましたか?」

「いえ、もう遅くなったから伺うのも失礼だと思ったし、電話をしようかなと思ったんですけど、私も夕食を準備しないといけなかったのでそのまま忘れてたんですよ」

「最後に洋子さんとお話ししたのはいつですか?」

「その日の朝、庭の掃除をしていたので挨拶しました」

「そうですか。ありがとうございました」

鍬下が次に、あきる野市の岡本誠宅の焼け跡に着くと、小川から電話があった。

「鍬下です。何かありましたか?」

「国分寺とあきる野市の火災原因調査報告書が揃った。この2件からはガソリンの成分が検出された。やはり放火で間違いないようだ」

「おかしいですね。最初の多田さんのマンションからは燃焼促進剤は検出されなかったんじゃ」

「ああ。最初の火災と後の2件は別件の可能性が高いな」

「じゃあ、あのパーカーの男は偶然そこに居合わせただけということですか」

「分からん。リレー捜査を続けているが、少なくとも最初の火災ではマンション内部に侵入していないことは確かだ。ただ偶然にしては、3件とも火災が発生する直前にやってきて、火事を見物している。やはり何らかの関りがありそうだな」

「分かりました。引き続き調べてみます」

鍬下は周辺の聞き込みを始めた。火災現場から20メートル程離れた家の西村浩之という高齢男性に話を聞いた時だった。

「この男を見かけませんでしたか?」

「いや、分かんねえな」

「そうですか。火災当日、何か変わったことはありませんでしたか?」

「いやー、ないと思うけどね」

「そうですか。ありがとうございました」

「ああ、ただ、全然関係ないと思うんだけどね」

「何でしょう」

「火事があった日の朝に散歩してたら、宅配業者が大きな段ボール箱を岡本さんの家の中に運んでたんだよ。大きな荷物だったから、何を頼んだんだろうと思ってたんだよ。ほら、あの人は昔から独身で、ずっと独り身だったからね。

それで周囲を歩いて戻ってきたら、同じ段ボールをまた白いトラックに乗せて運んでいったんだよ。段ボールがゴミになるから持って帰ってもらったのかなと思ってたんだけど、でも2人掛かりで乗せてたんだよね」

「その宅配業者、どこだか分かりますか?」

「いや、あんまり有名じゃないところだったと思うよ。帽子と制服は灰色でそれっぽかったけど、会社名は書いてなかったような。車にも名前が入ってたか入ってなかったか、あんまり覚えてねえな」

「何時頃か正確に覚えてますか?」

鍬下は詳細な聴取を終えるとすぐに一課に戻った。