二度目のタイ勤務後は、同じ東南アジア地域のシンガポール勤務となりました。

シンガポールには、「ホーカー・センター」と呼ばれる屋台村がいたるところにあり、海南式チキンライス、チャー・クイティオと呼ばれる米粉でできた平たい緬の焼きそば、ラクサーと呼ばれる辛いココナツ・ミルク麺など、「日常食」としてもかなり美味しい料理がいろいろあり、それらの食を十二分に堪能することができました。

ただし、日本からのお客様をもてなす際は、それらの日常食のレストランは横目に見つつ、まずは、チャンギ空港近くのイースト・コースト海岸沿いに数多(あまた)群れをなしている海鮮料理の専門店の一つに入り、紹興酒につけて蒸した酔っ払いエビや辛いチリ・ソースを絡めた赤く旨辛いカニ料理などに舌づつみを打っていただきました。

そして、その締めとして、「ゲイラン」という日本の新宿の裏通りにも似た猥雑な感じのする地域内の一角を占めている場所、個人的に「ドリアン通り」と呼んでいるところにお客様をご案内し、ドリアンの立ち食い経験していただくのが常でした。

お客様の多くは、鄙(ひな)びていながらも、どこかノスタルジックな雰囲気をもつ場末の街角にて立ち食いでドリアンを食べるという、その稀有(けう)な眺めとドリアン初体験に歓喜雀躍してくれたのです。

ドリアンを食したあとは、屋台のすぐそばにある水道の蛇口を使って手を洗っていただきましたが、これさえも日本からのお客様にはワイルドで楽しい経験に映ったようでした。

お客様をホテルに送り返す車の中では、「今夜はまったく予期すらできない不思議な一夜となった。異国情緒に溢れたとてもディープな体験に感謝する」旨のお礼の言葉が何度も何度も飛び出したことでした。ドリアンは偉い!

タイでは、「お酒をたくさん飲んだあと、ドリアンを食すると死に至ることがある」との話を仄聞(そくぶん)したことがあります。

お酒を飲みながらの食事後、栄養価の大変高いドリアンを食すると、お腹の中で発酵しお腹の具合が悪くなり、場合によっては死に至ることがあるというのがその理由でした。

実は、多くのタイの友人知人に、「お酒を飲んだあと、ドリアンを食べて死んだ人を知っていますか?」と照会したことがありましたが、私が知る限り、知っていると答えたタイ人は一人もいませんでした。

 

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