その昔、外務省北庁舎の六階には、タイをはじめとするインドシナ地域を主管する南東アジア第一課が陣取っていた部屋がありました。
それはある日のことでした。南東アジア第一課と同様に北庁舎六階の奥にあったソ連課(現在のロシア課)の課員が、奇妙な匂いに気がついたのです。
その課員は、これはガス漏れだと考えたらしく、その匂いのする方向へクンクンと鼻を鳴らしながら向かって行ったそうです。
そして、その匂いの源が、南東アジア第一課の部屋から漏れてくることを確信すると、「ガス漏れだ」とばかり勇んでその部屋の扉を開けてみたのです。
な、なんと、その部屋の中には、上座に座った東南アジア生活の長い課長をはじめ課員の多くが、タイ出張から帰国した課員が大きなタッパの中にお土産用として詰め込み、そのタッパを何枚もの新聞紙やタオルにくるんで持ち帰ったドリアンを、笑顔で食しているという驚愕すべき光景が展開していたのです。
そのときのソ連課の某課員の驚きはいかほどであったのか知らん。