【前回の記事を読む】「先月も額を割られた不審な仏が2人も出た。」…誰がやったかわからない、不審な変死体が発見され…
第二章 今町と高田
翌朝はかなり冷え込んだが、日が差し込む陽気となった。二月下旬の直江の津・今町は、冬と春がめまぐるしく交錯する天候が多い。
海猫亭(うみねこてい)の屋根裏部屋で一晩を過ごした勘治と濡れ鴉(がらす)の男は、軒つづきの奥にある共同井戸で顔を洗い、口をすすいだ。
今町の町屋は鰻(うなぎ)の寝床(ねどこ)のように細長い。家の間口は一間ほどしかないが、奥に細長い長屋形状になっており、隣の家とは土間つづきになっている。
まさに町全体が共同体である。
お遥(はる)は簡単な朝餉(あさげ)をこしらえた。勘治たちは海藻の入った雑穀粥(がゆ)をすすり、番茶を飲み干した。
「口直しに直江の津・今町名物の菓子、美津屋(みつや)の白あんだんごだよ。味見してみて」
お遥は盆の上に乳白色の三連だんごを載せてきた。
「おう、美味そうなだんごだ。山海の珍味から名物菓子まで、今町はなんでもあるんだな。遠慮なくいただきやす」
勘治はあっという間に串まで舐めてしまった。濡れ鴉の男の方のだんごも横目で見ると、
「おめえ、だんご、いらないんなら、もらうぜ」
言うや否や、男のだんごもぺろりと食べてしまった。男は食べ物には興味がないようであった。