狭い意味での病気は、あらゆる技術的な規則に従って治療されるが、患者の人格、つまりその人の苦しみにかかわる側面は、いつも、あまりにも短い時間で処理されている。

それは、文字通りの意味で、非常に不十分である。このような医学の分裂状態は、昔も今も、わたしの生涯を苦しめている医学の棘である(第5章参照)。

わたしのような、どちらかといえば外向的で感情に走りやすい性格の持ち主である若い医師にとって、病院の仕事の第一印象は、ある種の冷酷さであった。

感情を表して病人とのつながりを持つことは、医師が行うことではないと教えられていた。すなわち、冷静さは医師の美徳であり、患者に対しては、冷静な自分を見せて、抑制の効いた距離を保たなければ、立派な医師とは言えないと教えられていた。

挨拶のための握手以上の接触は、医師としては避けるべき態度であった。患者との対話能力や対話への意欲は、上司にとっては医療業務の重要な核ではなかった。

患者についての教育は、ベッドサイドでなされるのがルールであり、患者の想いを理解して接する態度は、むしろ例外的であった。

 

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