小説 『惰走は駛走に変わる』 【第5回】 大森 是政 知らせを受けてすぐに遺体を引き取りに行くと、「衛生上の都合で既に火葬した」…納得できない。見せられない理由があったはず。 【前回の記事を読む】賭け碁の時代が終わり、競馬の時代が来る。明治の横浜で博徒たちが選んだ新しいシノギのかたちとは「手入れが入ったときのことは、考えてます」中村川に架かる車橋を渡った先から競馬場までは、坂道が続く。夜も更けてきたが、日中の暑さはまだ残っている。水が湧き出している場所を通りかかったとき、工藤が立ち止まって合図したので、喉を潤した。さらに坂道を上っていくと、競馬場の正門が見えてきた。そ…
小説 『TOKYOメトロポリスの片隅で』 【第3回】 美園 あかね 「ほかに好きな人ができた。別れてほしい」5年付き合ってきた彼氏に、突然別れを告げられた。結婚の約束もしていたのに… 【前回の記事を読む】「みんなが見てる前で、こういうことされると困ります。」好意を寄せている同僚と仲良くなるために考えた計画だったのに…九月半ば、かなえにシェアハウスのリビングに呼ばれ、テーブルを挟(はさ)んで座った。「あたしね、来月から、厚木にある支店に異動が決まったの。だから、里紗と一緒に住めるのは今月まで」里紗は、急なことで心の準備ができていなかった。かなえとは、この一年半で、いろいろな思い…