「松原君。私のどこが一番好き?」すると松原が即答する。

「池江さんの声です!」

松原の返答を聞いてイケちゃんは思った。

『さっき、かわいいって言ってたよね……』

だけど、容姿(ようし)ではなく声だと言われたことがとてもうれしかった。

「デートはどこへ行くの?」

松原の顔をしっかりと見ながらイケちゃんが言った。

「えっ、デート? 車と鉄道だったらどっちが良いですか?」

「ドライブがいいな。戸隠神社へ連れてってくれる?」

「はい。了解です!」

目の前でデートの約束が交わされた瞬間、杏子とタマちゃんが乾杯のポーズをした。

「ナギちゃん、良かったね。私もカレシ候補を探しに行くね」そう言ってタマちゃんは他の席へ行ってしまった。

「私もさ、他の人たちの所へ行くね。お二人さん、ごゆっくり……」杏子も行ってしまい、イケちゃんは松原と二人だけになった。

「渚さん、ドライブいつにします?」

今までは池江さんだったのに、二人だけになると渚さんになっている。臨機応変なのかわからないが、誠実そうな人だとイケちゃんは思っている。ほとんど初対面と変わらないので、デートの前にもっと聞き出してみようと決めた。

 

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