【前回記事を読む】「男性関係…何かあったら教えてほしい。」のメッセージに、ちょっとだけ“事件”があったとはぐらかすと…
第2灯目 渚たちのファーストデート
「寒ブリのシーズンに合わせて冬にすると、車でのアクセスって厳しくなるんじゃないかな。北陸だし、あのあたりって結構雪が降るらしいよ」
「う〜ん、それでも寒ブリ食べたいよ。食べたい、食べた〜い!」
だだっ子のようなことを言うので、イケちゃんはお姉さんに揺さぶりをかける。
「お姉さんにしては珍しく頑固ね。わがままとも言えるわ。もしかして、私との旅……行きたくなくなったんじゃない?」
「そんなことないわよ」
そう言った後で、お姉さんが何かブツブツ言っているみたいだが聞き取れない。
「本当は私となんかより、今のカレシさんと行きたいんでしょ? いつの間にか心変わりして、灯台めぐりもやめたくなったのかしらね」
イケちゃんのトゲのある言い方に、お姉さんは強い口調で言い返す。
「だから違うって言ってるじゃない! アンタは、相変わらずのわからず屋だね」
久しぶりの会話なのに空気が重くなり、ピリピリした緊張感がただよっていることが電話越しでもお互いに伝わっているようだ。
「二人で会って話したいって言ったばかりなのに……旅行を延期するなんてイヤだよ。そんなのお姉ちゃんらしくないよ!」
実の妹に責められている気分になり、お姉さんは苦笑いするしかない。
「イケちゃん。ねえ、聞いて……知り合ったばかりの彼は、お取り寄せが趣味らしいのよ。だから旅先から寒ブリを送ってあげたくなったの。もちろん、その前にイケちゃんと一緒にたらふく食べた後だけど……それだけの理由よ」
イケちゃんが少し間をおいてから話し出す。
「ねえ、お姉さんの新しい彼って料理が得意なの? 旬の寒ブリなんて送っても大丈夫?」
「もしかして寒ブリを丸ごと送ると思ってるの? そうじゃなくて、一緒にしゃぶしゃぶするのよ」
「それって、カレシさんの部屋とかで食事するってこと?」
「いいでしょ。今の段階では私の勝手な妄想だけどね。外食するよりラブラブだと思わない?」
お姉さんが自慢しているように感じて、イケちゃんとしては面白くないが、うらやましくもある。
「しゃぶしゃぶデートか……。ごめんなさい。私、また勘違いしちゃったのね」
「いいのよ。私の言い方も悪かったわ」
お姉さんのやさしい語りかけを聞いていると、イケちゃんは本当の姉妹になったような感慨が込み上げてきた。そして、久々にお姉ちゃんと言ってしまったことに気づいた。