第1灯目 ふたりの渚に恋の予感?

休日の午前中、朝食の支度を終えたイケちゃんこと江池渚(いけえなぎさ)は、テレビの情報番組を見ながら食事を始める。

2枚目のトーストにバターをぬっていると、テレビに白い灯台の様子が映し出された。イケちゃんはバターナイフを持ったままテレビ画面をじっと見る。

『この灯台……どこだったかな。見覚えがあるんだけどな……えっと。そうだ、音埼観(かんのんさき)灯台だ!』

テレビ画面のテロップに「神奈川県・三浦半島の洋式灯台」と表示され、リポーターらしき女性が灯台の展望エリアで手を振っている。その後、リポーターからの情報が伝えられる。

「日本全国に、参観灯台というのぼれる灯台のぼれる灯台が16ヶ所あります。今日は、その中の一つである観音埼灯台の展望エリアに来ています!」

テレビ画面を見ながら、イケちゃんは小さくガッツポーズをする。すると突然、参観灯台めぐりをした時のさまざまな記憶がよみがえってきた。

数年前、インターネットで旅行に関するブログを読んでいた時、自分と同じという名前の人が書いたブログを見つけた。自分と共通点が多かったので、その人のことを詳しく知りたいと思いコメントを送信した。

ブログの主(ぬし)である、お姉さんこと石渚白か(しらいしなぎさ)らの返信コメントを読み、お互いに自宅の最寄り駅が渚駅だということを知った。

けれども渚駅が2ヶ所存在して、イケちゃんは長野県で、お姉さんは岐阜県だった。どちらも海なし県なので、また新たな共通点がわかった。

イケちゃんから、『お互いが暮らしているエリアを観光案内しませんか?』という提案をしたところ、お姉さんからは賛同を得られそうもない様子だった。

しかし、さらにコメントのやり取りを続けたところ、お姉さんが過去にイケちゃんのブログを読んでいたことがわかった。そこから、お姉さんもイケちゃんに関心を持つようになり、こうして二人の関係性がスタートした。

『今は充電期間として旅行は中断しているけれど、お姉さん、元気にしているかな?』

ブログを通じて出会った頃のことを思い出し、懐かしさが込み上げてきた。トーストをかじりながら、さらに記憶をたぐり寄せてみる。イケちゃんは、お姉さんが暮らしている岐阜県高山市の古い町並みエリアなどを案内してもらった。