第1灯目 ふたりの渚に恋の予感?

お姉さんはイケちゃんより一つ年上で落ち着いた印象がある。銀行勤めを辞(や)めてからは親戚のおみやげ屋で働いているので、限られた人たちとの交流しかなく最近のご時世には少々うとかった。

イケちゃんからお姉さんと呼ばれるようになり、自分なりの経験値を生かした旅を提案しようと考えるようになった。最初の担当になった時は心のゆとりをテーマにした旅行計画を意識した。

お金や時間の節約はやや後回しでいいと考えているようだが、交通機関や宿泊施設の早割やお得切符の存在を知らない。そしてレンタカーの予約を忘れてしまうといった危なっかしい面もあるが、旅をするのが大好きという点はイケちゃん以上かもしれない。

食事を終えると、イケちゃんは旅行へ行った時の写真を収めたアルバムを取り出す。アルバムをめくると、参観灯台めぐりをした時の光景が次々と思い浮かんだ。

参観灯台の完全制覇に向けた最初の旅は、宮古島と沖縄本島だった。

「伊良部(いらぶ)大橋を車で渡ったことが、特に印象に残っているわね」

写真を指差しながら、独り言のようにつぶやく。

『その次は私の担当だった東北地方の旅……有名観光地を組み合わせると、旅費が膨大(ぼうだい)になるって気づいて慌(あわ)てちゃったのよね。お姉さんからのアドバイスで素敵な旅になり、本当に楽しかった』秋田県の入道埼(にゅうどうさき)灯台の写真を見ながら、イケちゃんは日本海の水平線を思い出している。

アルバムをめくると、先ほどテレビで見た観音埼灯台の写真があった。