『静岡県熱海市の初島(はつしま)灯台へフェリーで行ったし、御前埼(おまえさき)灯台からは富士山が見えた……天気に恵まれたわね。それから、その次は……そうか伊勢神宮だった。ちょっとせわしなかったけど、次は余裕をもってお伊勢参りしたいな』

さらにアルバムをめくる。

『おっ、隅田川の川下りだ! 東京観光と房総半島の灯台めぐり。贅沢(ぜいたく)な旅だったな。仕上げは夢のテーマパーク……またいつか、お姉さんと行きたい場所よね。そうだ、あの日の夜に……』

参観灯台めぐりの思い出にふけっていたが、イケちゃんの自宅で旅の反省会をしている時のことを思い出した。お姉さんが当時付き合っていた彼と別れたという話を聞かされて、イケちゃんはショックを受けて考え込んでしまった。

自分が参観灯台めぐりに巻き込んだことで、お姉さんの運命を変えてしまったのかもと思い、お姉さんに迷惑をかけてはダメだと考えるようになっていた。考え抜いた末に『参観灯台めぐりは中止にしましょう』と、お姉さんにメールを送ると……お姉さんからの返信メールは怒りに満ちた内容だった。

『あのメールって、今でも信じられないくらい怖かったな。最終的にはお姉さんのやさしさを感じることができたけれど、やっぱりモヤモヤした気持ちは晴れていなかったのかも……』

そして、いよいよ最後の旅……イケちゃんは途中から感傷的になっていた。完全制覇をしたその先には何があるのかと思い悩み、心の底から楽しめていなかった気がする。

参観灯台の完全制覇を成(な)し遂(と)げた後で、お姉さんの家で話を蒸し返してしまったこと……あれは自分でも情けなかったと思う。『お姉さんの寝言からの勘違い……今では笑い話だけど、いつかはお互いに結婚するかもしれない。そうなったら一緒に旅をするなんてできるのだろうか……』