馬鹿を言い合ったり、ふざけて遊ぶことがなくなったのだ。そして、距離感を感じたのは友達に対してだけではなかった。
学校の先生たちにも同じような感覚を覚えたのだ。友達にも先生にも直接何かを言われたり、無視されたりしたわけではなく、何とも言えない遠さを感じて孤独感でいっぱいであった。そして一番きつかったのが、親戚である。
田舎で農業をしていたので親戚が多くて、お盆やお正月にはよく集まった。そんな中、顔はわかるが名前は知らない人が、よく母を取り囲んで母に何かを言っていた。
遠くで見ていると、
「田中さんとこかわいそうにね、お気の毒にね」とかすかに聞こえてきたのだ。僕たちの病気のことを母は言われているのだとすぐにわかった。その光景を見るのも、そのことばを聞くのもたまらなく嫌だった。
ある時、母に言ったことがある。「お盆もお正月もみんなのところに行きたくない。
家にいたい」と。母は黙って聞きながら、
「お母さんも行きたくないで。家にいたいよ。でも、そうしたらお年玉をもらえないでしょ。順也の大事な臨時収入なんやから、お母さん行ってもらってくるわな」と笑みを浮かべながら言った。“お母さんは強いなあ”と子ども心に感じた。
本連載は、今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。