【前回の記事を読む】「そうだ、手術したんや」目が覚めるといつものベッドから見える窓が見えた。やさしさの詰まった手術と家族の愛

やさしさの詰まった手術と兄のやさしさ

片づけから帰ってきた兄に、「ありがとう」と声をかけると、「うん」とだけ言って雑誌で扇ぎ始めた。すると、

「やめろ、臭いやんけ」

とたっちゃんの声がして、たっちゃんは僕にも聞こえる声で、「ふー、ふー」と言っていた。それを見たヤマト君も雑誌で扇ぎ、みんな僕のうんちの匂いが自分のところに来ないように一斉に扇ぎ始めた。“悪いなあ”と思ったが、みんな大笑いしながら扇いでいた。

笑うとお腹の傷が痛かったが、みんなが笑うのがおかしくて、痛みを我慢しながら僕も笑った。カーテンの隙間から、兄も笑っているのが見えた。すごく恥ずかしかったが、みんなが笑ってくれてありがたかった。

結果説明と病院の粋なはからい

笑ったり、大きく体をねじると手術跡にまだ痛みが走った。

手術も終わり痛い検査もなくなったため、あとは退院するだけだと単純に考えていた。この頃、退院したら何が食べたいかよく妄想していた。“大好きなエビフライをいっぱい食べたい”“キンキンに冷えたサイダーも一気飲みしたい”など考えていると口の中が唾でいっぱいになっていた。しかし、両親は違った思いを持っていたらしい。

検査結果が悪くありませんようにと、毎日仏壇に手を合わせていたとあとから聞いた。

ある日、野球のTVゲームをしながら兄が、

「検査結果って、来週わかるみたいやで」

と、画面を見たまま言った。