「えっ、なんて。結果がなんて」と画面に向かって聞き返すと、
「そやから、検査結果が来週にわかるねんって」
と、明らかにさっきよりも語気が強かった。“何怒ってるねん”と心の中で思いながら、
「へーそうなんや。それがわかったら、家に帰れるかな。だって、もう病院ですることないやん」
と兄の方をチラッと見ながら言った。すると兄はため息をつきながら、
「もうええわあ、ゲームやめ」
と言ってTVゲームのリセットボタンをいきなり押した。僕は試合に勝っていたから、いきなり消されてイラっとし、コントローラーを兄に向かって投げつけた。兄もコントローラーを投げ返し、ちょっとしたケンカになった。兄ともみ合いをしていると、奥のベッドからたっちゃんが、「何や、兄弟ゲンカか。やれやれ、二人とも思いっきりやれ」
と囃し立てた。僕よりも体も大きく力も強い兄には歯が立たなかった。たっちゃんの「順也、弱いなあ。情けないなあ」という声が遠くの方から聞こえてきた。すると、ヤマト君が、
「二人ともやめや。危ないやろう」
と言って、僕と兄の間に入った。たっちゃんも間に入ってきて、僕の頭を撫でながら、
「よう頑張ったやんか、ぼろ負けやけど」
と僕に言ったので、思いっきりたっちゃんの脛(すね)を蹴飛ばした。たっちゃんは、
「何すんねん」
と言って、僕のおでこにデコピンを連打してきた。その横で、ヤマト君が兄を連れて部屋を出て、廊下で何か話していた。あとで、何を話していたのかヤマト君に聞いても、
「大人の話や。まだ毛も生えていない順也には教えられへんわ」と言って、僕のわき腹や足の裏をくすぐり始めた。