「ケンカした罰や。こちょこちょの刑」

とたっちゃんも言いながらヤマト君に加勢して、僕は二人からこちょこちょの刑を受ける羽目になった。兄はそんな僕の横で、見ているのか見ていないのかわからないが、珍しくイヤホンでテレビを見ていた。

腎生検の結果は、母から父と二人で説明を受けると聞いた。僕は、「自分のことだから僕も聞きたい」と言ったが、

「難しい話やから、まずお母さんが聞いてから二人に話してあげるね」

と言ったので、諦めた。小児科の面会時間は15時~18時であったが、検査結果の説明の日は14時~17時に変更されていた。母は面会時間について、「先生の都合で時間が変わったらしいよ」と言っていた。母は面会に来ると、いつも家から持ってきた下着を引き出しに入れながら、僕にお昼は何を食べたかと聞いてくれた。その日も、いつもと同じだった。17時になり、看護師さんが来て、

「じゃあ、田中さん、あちらで説明しますね。今日の面会はここまでですよ」と、僕たちにも聞こえる声で言った。父も母も、

「今日の晩御飯なんやろうね。いつもやったら見られるのにな。明日また晩御飯なんやったか教えてよ。明日、来るからね」

と言って部屋から出て、看護師さんのあとを歩いていた。僕は、両親が出て行ってから、急に不安になった。“一体、何を言われているのか”“僕の体はどうなるのか”。

 

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