【前回の記事を読む】少女は自分の人生を諦め、殺される覚悟で行った。「社長さん。会社には殺し屋が雇われているのですね」
第三章 はぐれ小雀と眼無し鳥
一
事件? の後日談をもう少し書いておこう。
スペシャル騒ぎは桜木氏と寺坂謙志郎とに仕組まれたことだった。珠輝にどう話そうかと思案する社長に、
「社長さん、実地でいってはどうですか。もちろん悪役は私がやります。うんと怖がらせ てやりましょう。目の見えない彼女には酷なことは重々分かりますが、実体験は経験できませんし、実際に起こったならアウトでしょう。彼女には相当恨まれましょうが、あの性格なら必ず私たちの願いは分かってくれます。私はあの子を信じます」
「そんなことをやってもいいのかなあ」
「案ずるより産むが易しですよ。早くしないとあの子が危ないのではないでしょうか。私は金倉の経営者が信用できないんですよ。スペシャルでしたからと言って二人分の金を払うと、そう、あんたもなかなかのもんだねえ。これからもがんばってね。そう言って、しゃあしゃあと金を受け取ったそうです。本当なら何か言葉があるはずでしょう。そこに嫌なものを感じまして」
「そうだったのか。いやあ、あの日、母さんがカンカンでな。ことの次第を話したら、まあ嫌だ。そんな純情な子がいるんだねえ。天然記念物よ。そう言って笑ったがね」
「初めて会った赤の他人様がここまで親身に思ってくれたとは。やっぱり社長さんは立派な方だった」
一騒ぎのあと、二人が仕組んだ善意の真実を知った珠輝は、言葉を失った。