「企業の土壌を変えるのは、時間がかかるよね。短気な組織の成果基準とぶつかるようなら、横にスルっと、実務の流れから、はみ出して置いとけないのかね」

「……はみ出す?」

Keiさんと石橋さんは、和田常務とも話をした。単にプログラムの良し悪しではなく、経営戦略の中で人財開発が寄与できることは、多忙な現場に配慮した2時間~3日の研修やワークショップだけでいいのだろうか。また、どれほどの期間想定と規模感で、創造的人財の育成を考えていけばいいのか。ひょこひょこ講師の話は、改めてハウツー以前のおおもとを考える叩き台になった。

和田さんは、そりゃスキル教育ばかりじゃないよな。修行もあるし、あとは対話集会みたいな、ムーブメント形成も大事だと言いつつ、梶原副社長と話す機会を持つことにした。

「ご相談があります」

これまで創造的人財育成の領域でおこなってきたこと。根づかなかったこと。そして、やや異質な企画に遭遇したこと。それは、人財開発が業務管理や成果として認識してきた方向と、かなり違うこと。石橋さんが、簡潔に説明してくれた。

梶原さんは、にやにやしながら聴いていた。

――いいねいいね。こいつらは、どこかに書いてあるような、無難でカンタンにできることを持ってこなかった。『創造的人財は量産できません』……確かにその通りだ。『日常と向き合う態度』……我々の商売の原点だよ。『標準人間4.0』……もうそれ、やめようよ。

和田さんがフォローする。

次回更新は8月20日(水)、11時の予定です。

 

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