【前回の記事を読む】「整形外科」から「運動器科」に変更しようという動きあり?! 理由は整形外科を美容外科や形成外科と間違える人が多いため
第1章 痛みのしくみ
痛みとは? 〜専門家の定義〜
IASPの痛みの定義は、次の4つの文章を合体したものです。痛みとはこれら4つのいずれかである、と定義しているのです。
1.実際の組織損傷に付随する、感覚かつ情動の不快な体験
2.組織損傷が起こりうる状態に付随する、感覚かつ情動の不快な体験
3.実際の組織損傷に付随する感覚かつ情動の不快な体験に、似た体験
4.組織損傷が起こりうる状態に付随する感覚かつ情動の不快な体験に、似た体験
用いられてる言葉を説明しましょう。
「実際の組織損傷」:
これはわかりやすいでしょう。実際に生じた病気あるいはケガにより体組織が損傷されていることです。損傷とは出血を伴うようなキズだけではなく、スポーツや老化による炎症も含みます。具体的には骨折や関節炎の痛みなどが該当します。
「組織損傷が起こりうる状態」:
起こりうる状態、とは体組織に損傷が起こる寸前までいったが、実際には損傷に至らなかった場合です。たとえば外力や物理的エネルギーは、瞬間的だったり、ごく軽度であれば体組織を損傷しませんが、その刺激を痛みとして感じます。針を刺しそうになったり、熱いものに誤って触れたときの痛みなどです。
「付随する」:
組織損傷やそれが起こりうる状態は、常に痛みが付随する=感じられるとは限りません。
睡眠時、麻酔下、他の何かに意識が集中しているときなど、特殊な状況では痛みを感じない場合があります。疼痛科学の研究からそのしくみがおおよそ明らかになっています。