【前回の記事を読む】砂のうねりの向こうに見えていた一筋の煙が、二筋、三筋と増えて、その根元に赤い炎が砂から吹き出ている。いよいよ油田に来た

四、 サハラ砂漠用タイヤ

タイヤは14.00R20が十本装着されている。14.00は呼びタイヤ幅十四インチ(三五五ミリメートル)、20はホイールの直径二十インチ(五〇八ミリメートル)の意味だ。

装着されているタイヤブランドは一目見れば加藤にはわかった。レンジクルーザーに装着されていたフランソワタイヤのサハラXの大型版だ。やはりフランソワタイヤでないと走行は無理なのか。

注意深く観察すると、ほとんどのタイヤのビード部(ホイールとタイヤが嵌合する部分)に、リビアで見たのと同じような亀裂が入っているのが確認された。砂漠でのタイヤの使われ方の厳しさを、その亀裂の一つ一つが語ってくれている。

加藤は一本一本の摩耗の状態とビード部の亀裂の長さをチェックした。そしてタイヤの故障部分を指さしながら、片言のフランス語でハリール氏と必死に会話した。

「こんなに故障しているのに何故フランソワタイヤだけを使うのですか?」

「フランソワ以外は故障がすぐに成長して完全にパンクしてしまう。フランソワは故障してもその傷の成長が遅く、ほとんど最後まで走れる」

なるほどそういうことか、と加藤はすぐに理解した。

同じメルセデス2624の二台に装着されているニホンタイヤのテスト品をチェックした。しかし二台ともまだ二千キロメートルぐらいしか走行しておらず、特に異常は見られなかった。

「ソフトサンドでの走行性はどうですか?」と加藤が聞くと、

「今のところ問題ない。ソフトサンドでも空気圧を下げたら砂に潜らずに走行出来た」

加藤はとりあえずホッと胸をなでおろしながら、続けて聞いた。

「耐久性の評価はどうですか?」

「二万キロメートル走らないと評価出来ない」