【前回記事を読む】スーパーから交番へ――警察官が語るピッポの「気ままな自由散策」
第一走者 ピッポ(ビーグル犬)
気ままな自由散策
とにかく、交番に犬がいること自体がおかしなことである。またこの犬は、何かと人を引き寄せ、問題を起こしそうだ。もっと厄介なことが起こっては面倒だ。
警察官は本署へ犬を連れて行き、遺失物係に引き渡すのがよいだろうと結論づけた。というわけで、パトカーに犬を乗せるわけにもいかず、本署までは歩いて二十分ぐらいだから、仕方がないと歩いて行くことにした。
制服姿で犬など連れ歩いていると、公務中に犬の散歩をしているやつがいた、などと市民から苦言が届くかもしれない。制服を隠すために、黒い革のコートを羽織って歩くことにした。
歩き始めると、ピッポは歩くのがうれしくて仕方ないのか、力いっぱい紐を引っ張って先を急ごうとする。
「そう引っ張るな。これから本署へ連行するからな。あとは遺失物係の世話になれ。お前の面倒はもう見切れんぞ」
何を言われても、ピッポはうれしそうに歩いた。
こうしてピッポは警察官にさんざん迷惑をかけたあげく、本署へ連行されるところで私に発見された、というわけである。
もうピッポの面倒を見なくてよくなった警察官は、届け出てくれたMさんの住所を教えてくれ、丁重にお礼をするようにと言った。
通常なら拾得物の一割がお礼の目安だが、犬だから何ともね。まあ、菓子折りでも持って行ったら、と私に助言してくれた。