ピッポを家に連れ帰り、頑丈な首輪にリードを結び、夕飯を早めに与える。がつがつ食べたかと思うと、自分のハウスに入って丸くなった。

どうやら冒険もこれまでと観念したのか、あるいはやっぱり我が家はいいなと実感したか、もしくは見知らぬ人に囲まれた旅の疲れがどっと出たのだろう。安心し切った顔で、瞼(まぶた)も重そうだ。

Mさんの家を訪ねると、五十代の小柄な女性が玄関に出てきて、開口一番、「よかった、見つかって」と言った。

交番から連絡があり、飼い主が見つかったことを知らされ、一安心していたという。丁重にお礼を申し上げ、確保したときのピッポの話をひとしきり聞く。

連れ帰って、犬の餌を与えたらすぐ食べたので、警戒心のないかわいい犬だと思ったそうだ。

食い意地の張ったピッポならではの行動だ、とこちらは恥ずかしいばかりの心境だった。とにかく留守中主人に二匹も犬の面倒は頼めないからね、とMさんは言う。

そこにご主人も奥から顔を出して、よかったよかったと言う。面倒見る必要がなくてよかったのか、飼い主が見つかってよかったのか、あるいは奥さんがうれしそうなのがよかったのか、

「よかった、よかった」を繰り返した。

「ついでにうちの犬も見ていってよ」

Mさんはそう言って、ご主人に愛犬を連れてくるように言った。

奥に引っ込んだご主人がしばらくして出てくると、大きな顔と垂れ下がった耳、長い胴体をしたバセット・ハウンドが、まさにどたどたという調子で一緒に現れた。