【前回記事を読む】「ドッグセンターに、灰色の変なのがいる」と言われて目にしたのは、他の犬と違って、段ボール箱に入れられた二頭身の…
第二走者 醸 (ミニチュア・ダックスフント) 平成九年~平成二十二年
犬の名前
今日も眠くてたまらないのに、また誰かが熱心にのぞき込んでいる。強い視線を感じて、もわっと目を開けて上を見る。
興味津々の丸い顔した女が、目をきらきらさせて、じいっとこちらを見ていた。そしてそうっと背中の毛に触る。
ああ、気持ちいい。
犬は、また目を閉じて眠ってしまった。
私は値段を聞いて、ちょっと迷った。「長毛種で、ダップルというんですけど、こんなきれいな灰色の斑(まだら)模様は珍しいですよ。
おとなしいし、頭もいいし。二十二万円ですが、二十万にオマケします」
と、奥さんが言う。私が迷っているのを察して、最後の押しの一手を出してきた。
私はその足で銀行へ向かった。
なけなしの定期預金を解約して、二十万円を用意する。そしてドッグセンターへ。
そのまま連れて帰れると思ったら、獣医さんにワクチンを打ってもらう必要があるので、引き渡しは明日、と言われた。ついでにまだ生後二か月なので保険とワクチン代、通常は価格の一割が相場で二万円かかるという。
なあんだ、結局二十二万円かかるじゃないの!
平成九年(一九九七年)の十二月のことだった。