【前回の記事を読む】「車だから...」と躊躇していると彼女が「泊まったらいいじゃない?」と下を向いて呟いた。そういって二人はドイツビールをオーダーした。
第一章 全てを赦(ゆる)す色
ローテンブルクのクリスマス
二人で部屋に入るとそこには座り心地のいいソファと、食べ物を置くにはちょうどいいテーブルと、そして二人が寝るには少し狭いベッドがあった。
シンプルだけど心地よい、いつまでもそこにいたくなるソファ、そしてビールは二人の間をさらに縮めた。
並んで座る二人は手を繋いで、そしてキスをして見つめあった。またキスをして微笑みあった。
「運命って信じる?」
「今まで信じたことなかったけど、紫衣と出会ったのは運命だと思う」
「私もそう思う。聖シュテファン教会で会えたのは、お父さんが会わせてくれた気がするの」
「不思議だね」
真亜が言った。
「知り合って2日目だけど、紫衣との子供が欲しい。でも紫衣は子供はいらないんだよね」
紫衣はしばらく真亜を見つめて呟いた。
「真亜の子供なら欲しい」
テレビをつけたまま、部屋を暗くして二人はベッドに移動した。街のクリスマスイルミネーションの灯りが窓から入り込み、薄暗い中でもお互いを見ることができた。
カーテン越しに外の灯りが漏れる部屋で細く長身の二人は抱き合った。その輪郭は、やわらかな灯りの中で一つの陰影となり溶け込んだ。