二人は、お互いの存在を受け入れながら、互いに支え合っていた。体が震えるような愛の交わりは、深い調和を生み出し、魂の奥底まで浸透していったのだ。

真亜の腕は紫衣をしっかりと包み込み、紫衣は全てを真亜に預けた。

外は寒いのに汗ばんでいる体で二人は手を繋ぎ仰向けになった。

「子供ができたわ。あなたが私の中で泳いでいるのがわかった 」

——うん。シンデレラの靴みたいに、世界で一つだけ。こんなにぴったりの二人はいないね、紫衣。二人は運命だね。子供が出来たら、紫衣と真亜の上の字を取って「しま」 にしよう。「しま」なら女の子でも男の子でも大丈夫だよね?——

紫衣も「いい名前。いい名前」と頷いた。

「紫衣、もう少し長くいられないの?」と言う真亜に、 

「明日会社に言ってみるね、予定を一日ずらしてもいいですか?って」と紫衣も答えた。

当時はワガママのきくバブルの時代だったのだ。

一日帰国をずらせることになった紫衣はこのホテルにもう一泊延泊することにした。しかし二人はローテンブルクの街を歩くことなく、ずっと部屋にいた。抱き合い、話し、眠った。

真亜は何故自分が聖シュテファン教会にいたのかを話した。

「ピカソはね、『マティス亡きあと、シャガールのみが色が何であるかを理解している最後の絵描きだった。シャガールにあった光の感覚はルノワール以来誰も持っていなかった』と言ったそうだよ。

僕はシャガールが好きで、他の教会に飾られてあるシャガールもみたことがあるよ。ジャンヌ・ダルクも来たランス・ノートルダム大聖堂のシャガールのステンドグラスが圧巻で、聖シュテファン教会も行ってみたいと思って教会に行ったら、紫衣に会えた。