【前回の記事を読む】教会で出会った女性に「泊まったら?」と簡単に誘われて…気持ちを確認するのに時間はかからなかった。あの言葉を聞くまでは…

第一章 全てを赦(ゆる)す色

崩壊

バブル期に恩恵を受けたほとんどの人が崩壊と同時に損害を被った。

真亜の実家の南部家ももれなく大変な目にあうことになった。

真亜の母静子が、不動産会社から買った物件や、絵画のブローカーから買っていた絵が大暴落したのである。

現金ではなく、資産運用という形にしていたので、莫大な借金だけが残った。

さらに叔父の忠明の経営している製薬会社のドイツ進出も失敗し、大手の製薬会社に統合されてしまい、忠明は会社を手放した。

そして莫大な借金を抱えた南部家は……。

秀光が静子をかばうために自害した。

真亜が秀光から紫衣のお父さんの事を聞く前に、秀光はいなくなってしまったのである。

叔父のコネクションで入社した真亜がドイツに残れるわけもなく、外部から入ってきた社員が多くなり、忠明の元で働いていた社員はどんどん退職していった。

真亜も例外ではなかった。

静子は秀光の保険と家や貯金を処分して、なんとか自己破産を免れた。

この浪費癖のある母親とどうやって暮らしていったらいいのだろう。

人生なんてこんなものだ、と真亜はいつもしてきたように心を平らにして過ごす決意をした。またいつものように静子と暮らそう、と。

真亜と一つになったとき、紫衣は確かに自分の中に真亜が泳いでいるのを感じた。

それは当たっており、紫衣は妊娠していた。