【前回の記事を読む】一瞬の表情の変化と動揺を見せた田代。――そして、目撃情報がなかった第三の人物の捜査にようやく進展が…!

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「はい。しかし、過去にはアメリカ大使館員が麻薬密売に関与していたという事案もありますので、いまどき外交官と言えどもすぐに信用していいかどうか」

秋月はあくまで慎重だ。

「麻薬? 中米の国か。この男、麻薬密売に関与していると?」

「いやいや、そういうわけではないですが。もし、そうした違法なことのためにこの男が外交官宅に密かに出入りしていたとしたら、外交官が知らないとシラを切ることもあるんじゃないかと。この参事官、ジョセフ・ロペスと言いますが、非協力的というより何となく落ち着かない態度に見えるもんですから。写真公開を急いで、後で妙に難癖をつけられることになっても」

「そうか。しかし、かと言って、上の方まで話を持っていって外交問題にするのも大げさだな」

「はい。それで、回り道になるかもしれませんが、今、逆にこの外交官の身辺の捜査から写真の男と接点がないか確認を進めています。接点があれば、第三のこの男がホシである可能性はほとんどないということになりますが、接点がないとなると、写真の男と国枝和子との関係がかなり確かなものになると思います」

「よし、分かった。ともかく、この第三の人物の行き先が四階に絞られたことは前進だ。この外交官との関係がないとなった段階で写真の公開を考えよう」

植村の言葉を機に秋月班のミーティングが終わり、刑事たちが一斉に立ち上がった。