【前回の記事を読む】飯島の父の冷静な応答に焦る田所刑事。"ごまかしは利かない"と悟り、ついに核心への聞き込みを決行
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「……はい。ただ、関係者からのうわさ程度でしたので、確認をしたかったんですが」
「じゃ、もう、分かっていると思いますので。めいは、中学生の頃まで、心の病と言いますか、情緒が不安定で病院で診てもらっていました」
「情緒が不安定?」
「はい。普段は大人しくていい子でしたが、時々ヒステリーというんですか、気分にむらがあって、気にした家内が病院に連れて行ってました」
「どちらの病院でした?」
「隣の知立(ちりゅう)市にあるなんとか心療内科というクリニックでしたが、正直、よく知りません。私は、めいを病院に連れて行くことに反対でしたので。家内とは、そのことでえらくもめて、もう勝手にしろという感じでしたから」
「それは、前の奥さんですね?」
「そこまでご存知ですか。まあ、もう、めいから聞かれてますよね。前の家内です。まあ、そんなこんなで、めいが中学生になった頃に離婚しました」
「すぐに再婚されていますが、その頃から娘さんに変わった様子はなかったですか?」
「どういう意味ですか? やっぱり、娘に何か疑いがかかっているんですね」
「あ、いやいや。細大漏らさずの原則でして。いや、失礼しました。で、病気についてはなんと」
「ですから、情緒不安定と。病名までは知りませんが、要するに情緒が不安定だと先生に言われたと聞きました。でも、それは治りました。中学三年の初め頃まで一人で病院に行ってましたが、もういいと言われたということでした。ですから、その後は名古屋での一人暮らしも許したんです」
「何という病院か思い出せませんか。あるいは、先生の名前なんか」
「だから、病気も治ったし、もう関係ないんじゃないですか。そこまで言う必要があるんですか? そもそも、娘はあなたがここに来られることを承知しているんですか?」