【前回の記事を読む】事情聴取中に見せた態度の豹変ぶりが忘れられず…再び刈谷へ飛び、飯島めいの過去と父親への接触を試みる!

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「それで、聞きたいこととはいったい何でしょう」

「はい。お嬢さんが、カズコブランド社に入社されたいきさつをお聞きしたいんですが」

「……あの、娘に何か疑いがかかってるんですか?」

「あ、いや。みなさんにお聞きしていることでして。例えば誰かの紹介で入社された方なら、その紹介された方も含めて国枝社長と関係のあった人物の範囲を広げることが出来ますので」

「なるほど。まあ、もう調べられているでしょうが、娘は名古屋の高校から東京の職業高校に転校しました。昔からデザインの勉強をしたいと言っておりまして、東京の、確か上野服飾学園という高校、と言いますか専門学校に入りました。ただ、もうその頃から自分で勝手に決めてやっていましたので、その先のことはよく分かりません」

「そうですか。でも、お嬢さんの面倒をよく見られていたようですが?」

「はあ?  どういうことですか」

「ずいぶん、仕送りなどされていたとか」

「ああ、娘、そんなこと言ってましたか。あの子は、私がだいぶ年を取ってからようやく授かった子でして。大事に育てたつもりですが、成長するとだんだん離れて行ってしまって。まあ、自然の成り行きでしょうが」

「自然の成り行きと言いますと、何かお嬢さんが離れて行かれる理由でも?」

「いやいや、成長すると誰でも親元を離れてゆくという意味ですよ。しかし、妙ですね。カズコブランド社への入社のいきさつ、本人から聞かれなかったんですか?」

「カズコブランド社の全員に話を聞きました。もちろん、その際、お嬢さんからもお話は伺っていますが、入社のいきさつまでは聞いていなかったもので」

歯切れが悪かった。

「その後、お嬢さんにお話を聞く機会もなく。いい機会ですので、お聞きしようと思ったまでです。飯島さんならお顔も広く、何か伝手(つて)でもあってのことではないかと思ったものですから」

「そうですか。ともかく、知らんです。本人の好きなようにやらせていましたから。今、いい機会だからとおっしゃいましたが、と言うことは、お見えになった本当の目的、訊きたいことは他にあるということですか?」