ゴルフは美香もほかの友達もやっていたけれど、本当は大して興味はなかった。でも谷口が行きたいと言うのなら勿論付き合う。練習するところを見ているだけでも構わなかった。

その日はまだ梅雨も明けていないのに気温が上がって、とても蒸し暑い日になった。

「ドライブがてら、いつもとは違う場所で練習してみようかな。気分が変わっていいかも」

運転する谷口の横顔を栞はじっと見つめる。谷口は煙草を吸わない。そこも栞の理想通りだ。煙草を吸わないから口臭も気にならないし、髭や肌もきちんと整えられていつも清潔感にあふれている。

栞は煙草の煙が苦手だった。ヤニで部屋中が汚れてしまうことを考えると、灰皿が家の中にあることさえ嫌なくらいだった。谷口が煙草を吸わない人で良かったとつくづく思う。

ゴルフウェアは着る人によっては、おじさんぽくなってカッコ悪いのに、谷口が今日着ている薄紫色のゴルフ用のシャツのセンスは断然良い。

やっぱり背が高いから何だってホント素敵に着こなせるのよねと栞は満足する。こうしていつも会う度に、谷口の好ましいところ、理想通りなところをいくつでも見つけてしまう。けれど、それは自分だけがそうしているような気がして悲しくなる。

谷口は私のことをどう思っているのだろう、一緒にいて楽しいだろうか、気に入ってくれているのはどんなところだろうか、いや、考えるのはもうよそう、こうして誘ってくれて今日は久しぶりで会えたのだから。