『悪童たちと凡夫』では、「『ところで、日本歴史上の人物の中で、たれが最初に凡夫であると悟られたか』と訊かれた。
~中略~『それは、法然上人と親鸞聖人や』と先生はいい、『今はむりかも知れんが、大人になったとき、もう一度いまのことを思いだして、考え直してごらん。
ようわかる。もし大人になってもわからなんだら、その人間は一生不幸な人や』そういわれたことが、いまでもありありと思いだせる」と感動的に書いています。
司馬さんにこれほどの強い印象と感動を与えた芦名先生とは、一体どんな先生だったのでしょうか。
司馬さんが芦名先生について書いたり話したりしたのは、ほんの数回しかありません。讃美しすぎるような筆致の随筆と、先生について書いた回数の少なさ。両者の間にギャップがありすぎるように思えます。
このギャップが私に司馬さんが書いていない何かがあるのではないかと疑わせました。
とはいうものの、それは簡単には見つかりませんでした。この講演録を初めて読んでから、そのヒントの糸口が見つかるまで何年間もかかってしまいました。
やっと見つかったヒントの糸口とはどんなものだったのかについては、後半の防府市講演会「松陰のやさしさ」と「人蕩し秀吉」で詳しく紹介したいと思います。
1 「芦名先生自宅訪問記」校友会雑誌『上宮』30号 一九三六年十二月 司馬遼太郎記念館所蔵
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