いや、ちょっと待てよ。
三十代、四十代ときて、素直に五十代がくるなんて……。
三回目で「そっちかい!」と驚かされるパターンも考えられる。
また、三十代に戻る? それとも続けて四十代? 一気に年齢が上がって七十代のご老人? 逆にグーンと若返って、十代? いや、十代どころか子供?
こうなったら、何がどうなるか分からんで。
二日続けて弟子入り志願者が来たからといって、三日目も来るとは限らないのだが、喜之介の頭の中は既にもう三人目がやってくるという前提で思考を繰り返し、混乱の渦巻きの中に吸い込まれてしまっていた。
あー、どうしたらええねん。
そんな困惑を引っ提げ、出番を終えて天神亭から出ようとして立ち止まった。
ここから少し歩いたところで、声をかけられる……というのが二日連続のパターンだ。
心臓の鼓動が高まる。
また弟子入り志願者が来るのではないかというドキドキ感が支配した。
よし! それを払拭するように気合いを入れて外へ出た。
周囲が気になるが、あからさまに見回すのもおかしい。
衣装を入れたキャリーバッグを動かし足を進める。心臓バクバク。
サスペンス映画で敵に狙われている男の心境が分かったような気がした。
「あのう……」後ろから声がした。
来た! 三日連続だ!
【イチオシ記事】朝起きると、背中の激痛と大量の汗。循環器科、消化器内科で検査を受けても病名が確定しない... 一体この病気とは...