【前回記事を読む】そんなことってある? 自分のもとに、二日連続で弟子入り志願者が現れた! けど…オッサンやないかい!
第一章 怒 涛
二、また来たんかい!
まさにオッサンぽい、もっちゃりした喋り方だ。
「うーん、弟子にねえ」唸(うな)った。
きのうも同じやりとりをしたことを思いだした。
「あきませんか?」オッサンが聞いてきた。
きのうの椿沢祐斗の場合と同じだ。
「アカンというか、何というか」自分でも恥ずかしいぐらいのうろたえようも、きのうと同じだった。
「そんなこと急に言われてもやなあ」
「あきませんか?」また迫ってくる。
「いやあ……」
困った末にまた同じ質問をしてしまった。
「あのう、あなた、僕が誰だか分かっていて、弟子になりたいって言うてるんですか?」
「ハイ、分かってます。花楽亭喜之介師匠!」
ここらあたりまでは、きのうとほぼ同じやりとりだ。
ただ相手がイケメンからオッサンに替わっている。
きのうはこの後、どうして自分に弟子入りしたいのか? その理由を聞いたのだった。
きょうも一応聞いてみるか。
「喜之介師匠の芸と人柄に惚れたんです!」先に言うんかい!
人柄と芸。きのう椿沢祐斗が言ったことと同じだ。
そんなに俺って、人柄と芸がええんかなあ。そう感心する前に、同じことをこのオッサンが言ったことを不思議に感じた。
人柄と芸に惚れました。