【前回記事を読む】履歴書を持って弟子入り志願してきた祐斗。ルックスがよく、話し方に好感が持てる。「分かったけど。問題は、何で〇〇やねん」
第二章 面談
一、椿沢祐斗
「何かおかしいですか?」祐斗がその表情を見て言った。
「いや、何も」
喜之介はそう言いつつ、祐斗を弟子にしようという思いへと傾く自分を自覚していた。
そうすると……次に考えることは?
「これは他の落語家の人も皆、聞いてることやねんけど、君の親御さんは落語家になろうとしていることは知ってはるんか? 賛成してはるの?」
喜之介が師匠に弟子入りする時もこれは聞かれたことだった。
「え? 弟子にしてもらうのは僕なんですよ。親は関係あります?」
祐斗が初めて少し語調を荒らげた。
「いや、まあ」
「そもそも僕はもう三十歳なんですよ。親の許可も何も関係ないでしょう?」
そう言われてみたらそうだ。親が反対していようが関係はない。
「確かにそうやけど、まあ、一応、ご家族には言っておいてもらったほうが」
「それは関係ないと思います。これは私の人生ですから」 祐斗はきっぱりと言った。 この話はこれでやめておこう。喜之介は思った。
そして、これは言っておくべきかどうか迷った。
祐斗を弟子にするとして……そう、まだ、あと二人、弟子志願者がいるのだ。
でも、特に言う必要はないか。沈黙の時間が増えた。
「喜之介師匠、で、私は弟子にしてもらえるんですか?」結論を求めた。
「それは、きょうの面談の結果をよく考えてから、改めて連絡させてもらうわ」
「それはいつ頃までに?」
「できるだけ早く」
「分かりました。よろしくお願いします」祐斗は深々と頭を下げた。