「二車線に三車線分の車が走ろうとしても、動かない。一車線に二車線分の車が走ろうとしても、動かない。しかし一車線分に一車線分の車ならスムーズに動く。お母さんの腸は今一車線なんや。二車線や三車線分の食べ物を入れると、詰まってしまう。そっとそっと、一車線分の食べ物を、通してやらなければならないんや。分かるか?」

「よく分かる」とあい子は言った。

オペラの開演は14時で、30分余り前に到着した。プログラムを入手して出演者を見ると、[クイックリー婦人:エレーナ・ザレンバ(メッゾソプラノ)]とある。この人は知っていた。2001年(ほぼ15年前)の春に、バイエルン国立歌劇場において、私はこの人の『カルメン』を観ている。

確認のため今日のプログラムを精読すると、エレーナ・ザレンバはカルメン・タイトルロールを、「世界中で22の異なるプロダクションで270回以上」演じている、と書かれている。そのうちの一度をミュンヘンで、私は観たのだった。

そのときは予めチケットを入手していたのでなく、僥倖で最良の席が取れたのである。ドタキャンがあったと思われる。前後して同歌劇場で観た『ローエングリン』は、最後部の席であった。

カルメンは、最前列、指揮者の右すぐ後ろ、オーケストラ・ボックスが覗ける場所だった。場所は良かったが私は残念ながら一人だった。一人旅だったのだろう。

隣に恰幅のいい(よすぎる)婦人がこれも一人だった。一人でオペラに来る淋しいオバサンもいるんだと、安心した。このオバサンのカルメンへの声援が並でなかった。凄い声を出した。

幕間に私が(日本語で)「カルメンは素晴らしい!」と言ったら、「カルメン、イズ、マイ、ドウター!」と返ってきた。エレーナ・ザレンバのお母様だったのである。サインを貰った。

帰りに会社によって少し作業をした。明日良子をT医院へ連れて行くので、午前中は出社できない。そのためのちょっとした作業である。

6時半過ぎに家に着いた。良子は『サザエさん』を観ていた。

次回更新は4月28日(月)、20時の予定です。

 

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