11月4日(水)
オナラ(続)
今日はあい子は歯の治療があり遅くなるので、私一人が良子を見舞った。
昨日よりは随分元気になっていた。痛みも和らいだという。しかし咳をすると痛むという。
昼食から五分粥が始まったようである。
夕食が運ばれてきたが、五分粥というよりほとんど重湯に見えた。
ベッドの背を起こしてスプーンでそれをすすったが、一口ごとに頭を後ろに倒し、目を閉じて溜め息をついた。まだまだしんどそうである。全部を食べることができず、残して蓋をおいた。
オナラがまだ出ない、と言った。
「げっぷは出るのに」
今やそれが最大の関心事であった。
腸の活性化のために、動くこと(院内歩行)が勧められていた。
歩いたけど、ツライ、ということであった。
しかし良子は、こういうことは辛くてもやり遂げる女である。昔階段から落ちて手首を骨折したとき、そのリハビリの徹底に感服した。手首骨折の痕は完璧に消えた。
「入院中の診療計画」表によると、この日は、「肛門に入っているチューブを抜く」とある。
想像だが、腸管内と外気の圧力を同一にし内圧上昇による縫合箇所への影響をなくしているのであろう。肛門括約筋は閉じられず、ツーツーである。
「ならば音がしなくて当然ではないか」と私は言った。弁のない笛である。
昨夜差した一輪の「あけぼの」が、実に美しく、開いていた。
11月5日(木)
オナラ、出た。バンザイ!
今日は大阪への日帰り出張であった。
あい子に、お母さんのオナラが確認できたら、直ちに携帯へ、メールするように言っておいた。
≫2015/11/05 18:35
≫今朝オナラ出たってさ!!
≫2015/11/05 18:56
≫バンザイ
次回更新は4月12日(土)、20時の予定です。
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