我が家には〝孫〟がいないので、老夫婦ではあるが、じいさん・ばあさんにならない。おとうさん・おかあさんである。
「あなた」と呼ばれたこともない。
若い頃に、「あなたと言え」と求めたことがあるが、「あなたなんて、いやや」と拒否された。
そんなことで、9月5日は始まった。
この日は午後、すみだトリフォニーホールで新日本フィルハーモニーの定期公演、バルトークの『ピアノ協奏曲3番』と、演奏会形式の『青ひげ公の城』があった。
青ひげは曲名は知っていたが、実際に聴くのは初めてであった。
私は旅行は良子と一緒に行くが、コンサートホール、劇場へは、あい子と行く。
良子が極端な近視で、舞台の動きがよく見えないのである。
夕刻に帰ると、良子には特に異常はなく、食事の用意が進んでいた。ただ、この夜何を食べたのか、思い出せない。
日曜日、9月6日の朝も何事もなく明け、この日は11時から国立劇場小劇場で、文楽の公演があった。「面売り」「鎌倉三代記」「伊勢音頭恋寝刃」の3本で、十分に堪能して帰った。そのときも特に変わったところはなく、普通に楽しく夕食をとった。
ところがそのあとしばらくして顔色が悪くなった。
と言って直ちに救急車を呼ぶほどではないらしく、
「明日の朝、O医院へ行ってみる」
と言った。近所の医院である。
それじゃボクが付いていく、と言った。
明くる朝、7日月曜日の朝一番に、O医院に入った。
先生の診察は、「宿便」原因、とのことであった。良子よりの又聞きであるが、便通と宿便は異なり、通じはあっても宿便が残る場合がある。それがガスを発生している、とのことであった。O先生の処方箋によりすぐ近くの薬局でクスリを貰って帰った。
良子は、「明日、東邦医大病院へ行ってみる」と言った。大森病院で、3・11東日本大震災の直前に胆嚢切除の手術を受け、3・11の激震を病床で味わったところである。
「それがいい。ちゃんと検査してもらいなさい」
そしてあい子が送っていくことにした。
次回更新は3月27日(木)、20時の予定です。
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