【前回の記事を読む】ずさんな飼育管理、来場者が動物に勝手に餌をやるなど動物の死が相次ぎ「死の動物園」と言われる「スラバヤ動物園」

第四章 スラバヤを楽しむ

二つの世界

道路の両側には、レンガを積み上げモルタルを塗っただけの簡素な造りの建物が並ぶ。

大衆食堂からは鶏肉や山羊肉を焼く香ばしい炭火の煙が立ちのぼり、屋台風のカフェでは、カウンターに座った若い男たちがコーヒーカップを片手にたばこの煙を燻らせながら、スマホを操作している、建設現場では数人の作業員が座り込んで煙草をふかして休憩し、八百屋では少し干からびた野菜が雑に並べられている。礼拝の時間になるとモスクからは大音量のアザーンが流れてくる。

表通りから一歩路地に入ると、道路の両側に雑木林、雑草の覆い茂った空き地、住宅が混在している。

年寄りは通りに面したテラスの椅子に座り外の様子をのんびり眺め、子供たちは家の前の道路を裸足で走り回っている。おばさんたちは、薄地のカラフルなワンピース姿で井戸端会議をしている。

小さいころから勉強ばかりして、人工的に造られた高級住宅街の豪邸に住み、高級ショッピング・モールしか行かず、高級車を何台も持ち、何人ものメイドを雇い、子供の世話は彼女たちに任せて、お金と時間に追われている富裕層の人たち。

一方、狭い家に家族が肩を寄せ合って住み、伝統市場で雑談をしながら買い物をし、屋台やワルンで仲間とワイワイガヤガヤ騒いで、将来の心配なんかしない庶民。

インドネシアは同じ土地に二つの違う国が存在しているような気がする。そして、一体どちらが幸せと感じているのだろうかと散歩しながらふと考えてしまう。

伝統市場

スラバヤ市内には二十を超えるショッピング・モールが点在している。その一方で、パサール・トラディショナルと呼ばれる伝統市場も庶民の台所として生き残っている。

通勤路の途中にパサール・バンギルという比較的大きな伝統市場があり、週に一回は野菜や果物を買うために立ち寄った。値段はスーパーマーケットの半分以下で、交渉すればさらに安くなることもある。