【前回の記事を読む】インドネシアを代表する観光地「ブロモ山」。流れている雲は滝の水が落ちるように下に吸い込まれていく不思議な光景に釘付けに
第五章 インドネシアの旅を楽しむ
南ジャワの絶景海岸
ジャワ島の北側は大陸棚になっていて、海も比較的穏やかである。それに対し南側の海岸はインド洋に面し、波が荒いうえにすぐに深い海溝となっているので、昔から遭難する人が多かった。
BIPAの授業でも「ジャワ島の南海岸にはニ・ロロ・キドゥルという女神が住んでいて、彼女が怒ると人を連れ去って、その人は二度と戻ってくることはない、また、緑色の服を着ている人を見ると、その人を自分の召使だと思い、海に連れていく」という民話を習った。
このような事情により、昔から交易船は比較的波の穏やかなジャワ島北側のジャワ海を通った。その結果、北海岸は交易で栄えた都市が多いのに対し、南側はほとんど開発されず、自然が残り海水が透明で風光明媚な海岸が多い。
二〇一五年四月末、やはりシティの誘いで東ジャワのインド洋海岸巡りの旅に出かけた。今回は、運転手、シティの他に小柄なインドネシア人の女性が一緒である。途中、勤務先の工場の近くで洪水による渋滞に遭い三時間ほど足止めを食らった。
最初に向かった先がジュンブルから少し南に行ったところにあるシティの親戚の家であった。そこで二時間ほどシティは話し込み、運転手は昼寝をしている。どうやら自分の親戚の家に用事で行くために我々は利用されたようである。
それでも、初めてインドネシア人の民家に上がらせてもらい、家の人と世間話をし、近所の気だるい空気が漂っている田舎道を散歩し、東ジャワの田園風景を楽しむことができた。
そのあと、ワトゥ・ウロ海岸、その隣にあるパプマ海岸を回った。いずれの海岸もジャカルタやスラバヤでは考えられないほど水は透明で、大きな岩が転がっていて、景色は雄大であるが、波は高く遊泳に向いていない。
内陸にあるジュンブルという町まで戻ってから、真っ暗になった山道を二時間余り走ると、下の方に無数の灯りが輝いている。長い坂を下って行くと、ジャワ島東端の港町バニュワンギのロッジに到着した。