第一部

一 出会い

大きめの花が可愛い。特徴は下から段々に上がって咲くことだという。照史が立ち止まり指を差した。

この位置だと、梅雨明けはもう少しと言い微笑んだ。そして見送りはここまで、女性の夜道は危険だと言った。駅で購入したチーズケーキを手渡すと、喜んで受け取ってくれた。

「おやすみなさい」

と互いに挨拶をしてその背中を見送った。私の胸がくすぐったくて彼に惹かれている。その気持ちが嬉しくて幸せだった。その出会いは奇跡で、振り返ってみると、初めからそうなるべくしてそうなった二人だと思う。

その後、照史は初盆に訪れてくれた。その日は風通りも良く、縁側の風鈴が気持ち良く鳴っていた。伯母は所用で不在だった。その日は休日で、色々な方が弔問に来て下さるかもしれないと、留守番を頼まれていた。

照史は突然の訪問を詫びたが、私は素直に再会出来たことが嬉しかった。ブーンと扇風機の回る音が静かなリビングに響き、全力でそれを聞いた。

私は緊張している。このままでは沈黙が続いて場が持たない。

正直に言うと、彼の滞在時間を引き延ばしたかった。それゆえに私から声をかけた。おそるおそるだったが、思いきって連絡先を交換してほしいと伝えた。照史は表情が一瞬で明るくなって、同じ事を思っていたと、快く承諾してくれた。

その優しい瞳から本心だと感じた私は満面の笑みを浮かべた。そんな姿を可愛らしく思っていたようだ。