二 神を知る
日の流れは私の日常に様々な変化をもたらした。伯母は徐々に元気になりつつあり、自分は信じられない事に恋愛をしている。はっきりと認識できた。また共感覚にも、ますます磨きが掛かりさらに五感も鋭くなった。
毎朝必ずお向かいのお爺さんが、玄関先で家を見上げている。「亡くなって三年は経つのに離れられないのかな……」。私は日常的に気がついても、それを微笑ましく思った。きっと観える事も、与えられた意味のある事なのだろう。
私には少し気にしている事があった。食事に行く約束をしてから、だいぶ時が経っていたからだ。とはいえ自ら連絡する勇気は無かった。それでも、ただもう一度会いたいと心で願って毎日を過ごしていた。
それによりついに願いは叶う事となった。伯母に照史と食事に行くと伝えると、いつの間に二人は連絡をとっていたのかと大変驚いていた。
そして私には自由にしてほしいと言った。きっと不憫に思っているのだろう。それは憐れんでいるのではなく、早くに両親を亡くしたから、信頼できるパートナーを作り、幸せになってほしいと常に願っているからだ。
私は少し早く待ち合わせの駅に着いたが、すでに気持ちのゆとりがなくなっていた。「どうしよう緊張する……」。このひと時だけでも、饒舌になれればよいのにと、口下手を呪った。
うまく話せる方法などと、ネットで調べ出す始末だ。しばらくすると照史が小走りにやってきた。
少し汗ばんで息が上がっている。私もさきほど、着いたばかりと伝えた。お互い高鳴る心臓をどうにかしたい。
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