2 キャンドルナイト

東京から離れるにつれてさらに雪が降りしきり、あたりは一面銀世界だった。我孫子駅に着いた頃には僕は悲しい思い出を封じ込めていた。駅から十分ほど歩いて祖父の家に着いた。

「祖父ちゃん、来たよ」

「おお、聖也。寒かったろう、入れ入れ」

「お母さんがクリスマスチキンを持っていけって、うまそうだよ」

妹からLINEが来た。ビデオ通話だった。

「お兄ちゃん、着いた? お祖父ちゃんと代わって」

「真理亜か? 元気そうだな。そっちの雪はどうだい?」

「お祖父ちゃん、行かれなくてごめんね。お母さんとイブミサの係になっちゃって。クリスマスだけ教会に来てカップルでいちゃついてる奴らの気が知れないわ」

「あはは、ひがむな、ひがむな。相変わらず君たち兄妹は異性には縁が薄いとみえるね」

「ちょっとお祖父ちゃん、お兄ちゃんと一緒にしないでよ」

「美和(みわ)は頑張ってるみたいだな。学校も教会も一切手抜きなしで一生懸命だ。おまけにご馳走まで作ってくれたんだって。有難うって伝えてくれ。私なら大丈夫だよ、今夜は聖也と二人で飲み明かすから」

    

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