【前回の記事を読む】有紀ちゃんが亡くなったなんて…。僕はあまりのことに頭の芯が痺れて冷たくなり、胸の中が一気に空っぽになった
僕と雪女
2 キャンドルナイト
「お兄ちゃんに付き合って飲み過ぎちゃ駄目だよ。お母さんと替わるね」
「そうよ、お父さん、ほどほどにね。聖也は焼酎を持っていったかしら。プレゼントにしておくわ。お母さんにはカサブランカをね。メリー・クリスマス!」
電話が切れ、僕と祖父は顔を見合わせた。
「持ってきたのか、焼酎? お父さんの形見だっていう一本だろ? 美和の宝物じゃないか。嬉しいね。そうだ、出来立ての生ビールがあるんだよ。A・AWAの連中が試飲してくれってさ。いろいろ新製品にチャレンジしているみたいなんだ」
「ほんと、いいねえ、チキンにはバッチリだよ」
というわけで、僕たちは炬燵(こたつ)の上にご馳走を所狭しと並べた。チキンと里芋は祖父が手際良く温め、僕はサラダを盛り付け、キッシュとキャロットケーキを用意した。ビールはホップの苦みが活き活きしてビックリするほど美味しかった。遠慮なくチキンにかぶりつく僕を眺めて祖父は相好(そうごう)を崩していた。
「……この分だと大分積もるな、寒いわけだ。カーテンをしっかり閉めてくれるか」
僕はカーテンを閉め、暖かい炬燵に急いで戻った。
「うー、寒い。大分積もったよ。暗くてよく見えないけど庭は真っ白だ」
「聖也、大学のほうはどうだい?」
「うん、頑張っているよ。そうだ、祖父ちゃん、今度のレポートのことでちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「へえ、なんだい、私で分かることならいいが」
「雪女って知ってる?」
「雪女って……なんだい、唐突に」