「イノシシさん、ありがとう。今日の夕暮れにキツネさんを探して相談してみるよ」
イノシシさんが急に栃の実を探すのを止めて、上を向いて威嚇しながら言います。
「カラスくん、君は何かを隠して企んでいないかい。正直にならないと、今後は何も教えないよ」
カラスさんは、もう駄目だと思い、正直に企みを全部ぶちまけてしまいました。
「カラスはいろんなことに興味があるから、ぎんちゃんの興味あることを確かめたくてね。キツネさんがいたら話をしたいとぎんちゃんが言い出したから、探しているのさ。キツネさんは人を化かすらしいよ。それが本当なのか、キツネさんに聞いてみたいんだって」
イノシシさんが大笑いして言います。
「本当に人間は馬鹿だね。イノシシを怖がらずに殺す。そしてキツネさんには化かされるから怖いだって。実にくだらない。だけど、人間のその馬鹿さ加減が、妙に面白い。ぎんちゃんに言いな。今度一緒にキツネさんを連れて行くからと」カラスさんは、また余計なことを付け加えてしまいます。
「実は、タヌキさんも、同じく人間を騙して悪さをするって言ってた。それも確かめたいって」
イノシシさんは、呆れて笑いが止まらないまま言います。
「ぎんちゃんは人間なのかい」
カラスさんは、どう回答するか迷ってしまい、これには黙っていました。
イノシシさんとの約束で、数日後の夕方に、キツネさんを連れて裏庭に下りて来ることを、ぎんちゃんに持ち帰りました。
数日後、ぎんちゃんの家の裏庭に、突然、イノシシさんとキツネさんが注意深く下りてきました。
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