(自業自得だろうが、それにしてもこの病棟には水山高校の同級生が集り過ぎじゃないか? 田舎町で唯一の大きな病院だからかもしれないが、それでもこの病棟である必要はない。まさか梨杏の生霊が皆を呼び寄せているのか?)
海智は妙なめぐり合わせに急に不安を感じた。
「そういえば、宇栄原桃加を見たぞ。あいつがいじめの黒幕なんだぞ。何で平気な顔してここで働いてるんだ?」
「私もここに就職した時びっくりしたのよ。五年前から看護助手をしているらしいの。梨杏は意識がないから分からないけど、お母さんとは頻繁に会うわけでしょ。よく顔向けできたものねと却って感心するくらいよ。盗人猛々しいとはこのことかしらね」
随分古風な言い回しを使うもんだと海智は内心可笑しかったが、ふと何か違和感を感じて、一夏に訊ねた。
「一夏、お前、梨杏と知り合いだったのか?」
「えっ、うん、まあ・・・・・・」
彼女の返事は歯切れが悪かった。
「中学の頃からの友達だったの。高校ではクラスは違ったけど休日はよく会ってた。でも、途中からお互いに連絡を取らなくなって、そしたらあんなことに・・・・・・ごめん、私、夜勤があるからもう行くね。また来るわ」
そう言うと彼女は病室を慌てて出て行った。
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次回更新は12月22日(日)、11時の予定です。
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