「花の色素に相性の良い悪いがあるなんて、不思議ですね」美智子は青いバラを見ながらつぶやいた。
相性の良いものが出合って、宝物になっていく。
人間にもいえることなのだろうか……
青いバラを見た日、二人は以前と同じ「門や」へ行った。
席も同じ奥まった一角だった。田村は、美智子が花屋から会社の園芸部に転職してくれた礼だと言った。
それどころか、お礼を言いたいのは私の方です。勤務条件も給与も良くなりました、ありがとうございましたと頭を下げた。
「しかし、日に焼けるし手は荒れるし、女性に好まれる仕事ではないでしょう」
「私はもともと百姓の出ですから……」美智子はさりげなく応えた。
「久しぶりの日本で、こうして静かなところでゆっくり食事ができるのは良いものだな。
大陸アジアは活気があるのだが、ぼくには疲れることがあります。歳のせいかな」
「ネクタイ、ゾウの柄ではないのですね」
「もう話題に詰まる心配はないから」
田村のネクタイは深い海を思わせるストライプだった。
「ブルーは奥様の趣味ですか。政治家でそう言った方がいました」
「いや、三年前に亡くなりました」
【前回の記事を読む】彼に見つめられただけで、胸から首の辺りがふわっと熱くなった。少しワインを飲み過ぎたようだ……